肉じゃがの話

ある日、ヘタリアを読んでいると肉じゃがの誕生に関する知識が載っていた。

 

肉じゃが - http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%89%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%8C

東郷平八郎が留学先で食べたビーフシチューの味を非常に気に入り、日本へ帰国後、艦上食として作らせようとした。しかし、ワインドミグラスソースも無く、そもそも命じられた料理長はビーフシチューなど知らず、東郷の話からイメージして醤油と砂糖を使って作ったのが始まりという説がある。

 

なるほど、日本料理である肉じゃがは、元はといえばイギリスのビーフシチューを真似たものであり、実はイギリス生まれなのだ。

この内容をヘタリアでは菊ちゃんとアーサーが可愛らしく会話しているのである。

 

先日、友人(以下R)に用事のため電話をした際、ふとこの事を思い出し、なんとなく教えてあげようと思った。

 

「あのさあ、肉じゃがってどこで生まれか知ってる?」

 

まずは聞いてみる。答えはもちろん「日本」だ。返答を待つ。

 

R「えっ? わかんない。」

 

まさかの回答である。出だしから躓いてしまった。しかし生まれなんて曖昧な尋ね方をしたのが悪かったのかもしれない。気を取り直す。

 

私「ほら、日本じゃん。日本生まれじゃん。」

 

R「は? え、そうなんだ!?」

 

そうなんだじゃないよ、当たり前だろ。なんでここで食いつくんだよ。今すぐにでもそう言ってやりたかったが本気でわかってなさそうだったので黙っておいた。

 

私「でね、日本生まれだけど、元々はイギリス生まれなんだって」

 

R「ふーん」

 

いやいやふーんじゃないよ!一番反応があるかと思った箇所で、今度は反応が薄すぎる。どういうつもりなんだ、調子が狂ってしまう。

 

私「あのさ、日本じゃなくてイギリスだったんだよ? イギリスで作られたものなんだよ」

 

どう、意外でしょ?ちょっとは驚かない?と再度訴えかけてみる。しかし、

 

R「そりゃそうでしょ」

 

こっちが意外かつ驚きである。もしかして肉じゃがを知り尽くしているのか、とも思ったが後に引くのもなんなので続けることにした。さすがに元がビーフシチューだと伝えれば驚いてくれると思ったのだ。

 

私「あのね、元々はビーフシチューだったんだって。それを日本人が真似し……」

R「ああ゛? 何適当な事言ってんの」

 

怖い。今度は突如切れはじめた。元がビーフシチューであることがそんなに気に食わないのだろうか。それとも私が適当なことを言っていると思われているのだろうか。私の話にはそんなに信憑性がないのか?

兎にも角にも、「ハア?お前なに言っちゃってんの?」という、受話器越しでもひしひしと伝わってくるRの高圧的な態度に、私も若干ムッときていた。

ただ肉じゃがが日本料理という当たり前のことを告げただけなのになぜここまで見下されなければならないのだろう。

 

私「て、適当じゃないよ、ウィキペディアにも載ってる…」

R「そんなわけないじゃん、さっきから何なの」

私「いや、Rこそどうしたの? なんかおかしいよ」

R「は?あんたが変なことばっか言うからじゃん!」

 

こんなにくだらないことで加速する口論。Rのボルテージが上がっていく。

 

R「大体さあ、あんたの言ってること最初からおかしいよ!」

 

そして怒りが頂点に触れたとき、Rは叫んだ。

 

ミック・ジャガーが日本生まれなわけないじゃん!!」

 

 

おわり。